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内航求人・就職内定も前年比5割減

海技教育機構の求人・就職実態

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 海技教育機構はこのほど、海技関係の学校(海上技術学校・短期大学・海技大学校)に対する求人状況および就職内定状況をまとめ明らかにした。

 それによると、平成21年度の求人数は前年度比で5割近く減少。また、就職内定率も5割未満にとどまり、未定者が170名以上もいることが判明し、社会問題化するとともに受け皿となる内航海運事業者の責任と今後の対応が問われている。

 海技教育機構では今回の調査結果をみて、今後の船員政策や事業の促進にも大きく影響してくるのではないかと危惧。このほど内航総連に対し中長期展望のなかで、積極的な学卒船員の求人を促進するよう呼びかけている。

 今回の求人状況調査で明らかになったのは、平成19年度の求人は881名だったが20年度は766名。21年度は369名と前年度比48.2%まで低下していること。また、就職内定者をみると、海技関係の卒業者は376名で、このうち進学予定は40名、就職希望者は336人いる。これに対して、これまでの就職内定者は165名で内定率は49.1%に過ぎない。就職未定者は171人にも達している。

 内航海運の海事関係の学校に対する求人は、リーマンショック以前は毎年高齢化による離職などで、船員不足が深刻化し求人数は順調に増えていた。ところが、今次の最大不況の影響で、日本経済は大きな景気後退現象となり、内航海運も平成21年に入って、急速に3割から4割も輸送量が減少。結果してオペレーターの返船や、用船料の大幅切り下げが行われた。

 そのため、内航海運では船員不足どころか、船員の雇用不安が高まり、結果して海事関係学校への求人が大幅に低下したもの。船社筋によれば、新人船員を養成する余裕もなく、即戦力となる船員の採用がしやすくなったので、緊急避難策に甘んじているケースが増えている。

 海事関係学校への求人が減少しているのはこのためだが、海技教育機構では海事関係の求人が減少すれば、せっかく内航海運の求人が高まり、就職を期待していた卒業生に大きな失望感を与えかねない。結果して、内航海運に対するイメージが悪くなり、卒業生が内航海運から離れていくおそれがある。それでよいのかと憂慮している。

 こうした状況の説明を受けた内航総連の理事会では、これまで船員不足対策として、海事関係の学校へも強く求人を求めてきたが、不況の影響でこの求人が減少するとなると、海事関係の学校の信用がなくなってしまう。また、最近は海事関係の学校を集約しようという動きもあり、結果して海事学校の整理につながってしまうおそれがあるとして、対策を検討している。

『海運』 2010 年 3 月号掲載 860

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